刑法各論

刑法各論シリーズ  第12回 〜財産罪〜 横領罪part2

〜横領罪続き〜

構成要件は前回の記事から確認してください。


 

☆委任信任関係

委任信任関係を破るところに横領罪の本質が有るから、条文上は規定されていないが、横領罪の客体となる為には財物の占有が委任信任関係に基づくことを要する。

Cf. 偶然に自己の占有に属する物を領得→占有離脱物横領(254条)

奪取罪によって領得された物を領得→不可罰的事後行為


 

④「横領」:委託の趣旨を逸脱した不法領得の意思の発現行為(折衷説)

<横領の意義>

・ 領得行為説(判例通説):横領とは、「不法領得の意思」を実現する行為である。←覚える!

・越権行為説:横領とは、権限を逸脱した行為をすることである。

・折衷説:横領とは、権限を逸脱した、不法領得の意思の発現行為である。


 

<横領罪における不法領得の意思>

・ 利用処分意思・権利者排除意思双方必要説

・ 権利者排除意思説(判例)

横領罪における不法領得の意思とは、委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。

経済的用法に従って利用処分する意思は不要と考える。

補足:論文で表現するときは、定義だけを示せば十分。

例)~の行為は、委任の任務に背いてその物につき権限が無いのに所有者でなければできないような処分をする意思の発現行為といえるため「横領」にあたる。


 

⑶不動産の2重売買

☆譲渡人の罪責☆

<事例>Aは、自己の所有する甲土地をBに売却し、Bから代金を受けとった後、Bへの所有権移転登記を完了する前に、登記がまだ自己のもとにあることを奇価として、これをさらにCに売却し、Cへの所有権移転を完了した。

1 AにBに対する横領罪(252項1項)が成立するか。2⑴甲土地は「他人の物」といえるか。

この点、売買契約の締結によって、目的物の所有権は移転する(民法176条)

しかし、単に売買の意思表示があったにすぎないときは買主の売り主に対する信頼は弱く刑法上処罰に値する所有権が移転したという為には代金支払が必要であると解する。

本問では、Bは代金を支払っているので刑法上もBに所有権に移転している。

したがって、甲土地は「他人の物」といえる。

⑵次に、甲土地が、Aの「占有」にあたるといえるか問題となる。

思うに、横領罪の本質は委任信任関係を害する点にあるから、かかる委任信任関係を破壊するような濫用のおそれのある支配力が必要となる。

よって、横領罪における「占有」には、事実上の支配のみならず法律上の支配も含まれる。

したがって、登記名義人たるAに、甲土地の「占有」があるといえる。

⑶ では、売り主の占有は委任信任関係に基づくものといえるか。

思うに、売り主は売買契約に基づき買主に対して登記名義移転に協力する義務を負っており、それまでの間は登記名義を買主のために保存する義務がある。

⑷そして、「横領」とは、委託の趣旨を逸脱した不法領得の意思の発現行為をいい、横領罪の不法領得の意思とは、委託の任務に背いてその物につき権限が無いのに所有者でなければできないような処分をする意思をいうところ、売却・登記移転行為も所有者でなければできない行為であり、不法領得の意思の発現行為が認められる。

よって、「横領」したといえる。

3 以上より、Aには横領罪が成立する。

補足:第二譲受人に対する詐欺罪の成否も問題となる。古い判例には第二譲受人を処分行為者、第一譲受人を被害者としたものがあるが、学説には反対する。第2譲受人が登記を備えた場合第2譲受人には損害が無いという理由から詐欺罪の成立を否定するのが学説の大半である。


 

<譲受人の罪責>

上記の事例において、Cが第一譲渡につき悪意であった場合、Cに横領罪(252条1項)の共同正犯(60条)または教唆犯(61条1項)が成立するか。思うに、民法上第2譲受人は悪意であっても登記を経ることにより完全な所有権を取得するところ(民法177条)、民法上保護される行為を刑法上違法とすることは許されない。

ただし、第二譲受人が背信的悪意者で有る場合には、第2譲り受け人は、民法上保護される正常な取引の範囲を逸脱しており、刑法上も可罰違法性を有する物と解する。

したがって、Cが背信的悪意者で有る場合には、Cは横領罪の共同正犯または教唆犯が成立するものと解する。

補足:共同正犯の場合は、共犯と身分の話になる。


 

 

本日は以上です。

 

 

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