刑法各論

刑法各論シリーズ 第4回目 〜財産に対する罪〜 窃盗罪 

本日は財産罪の中の「窃盗罪」を扱います。

第235条 (窃盗罪)

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以上の懲役又は50万円以下の罰金に処する。


 

ステップ①

構成要件要素を取り出すと

他人の(占有する)①財物 を ②窃取 した者+(不法領得の意思) = 窃盗の罪


 

ステップ②

では、財物ってなんじゃらほいってことですが、簡単に言うと、

ア 有体物性を有するか

有体物説(現在の通説)

→「有体物」に限られる。

管理可能性説では財物概念が不明確となり、罪刑法定主義に反する。

・管理可能性説

→有体物に限らず、管理可能性の有るものを含む。

無体物の中にも保護すべき物が有り、有体物説では法益保護が全う出来ない。

補足1:刑法245条については、有体物説は例外規定、管理可能性説は注意規定と考えることになる。

*245条(電気):この章の罪については、電気は、財物とみなす。

補足:管理可能性説の中にも一定の限定を付する説もある(ex物理的管理可能性説)が不明確さは残ると思われる。

イ 財産的価値が必要

財産犯の客体である以上、財物は財産的価値があることを要すると考えるのが通説である。判例は、所有権の対象となるものであれば足りると考えているようである。

もっとも、通説も客観的な交換価値のみでなく、主観的・感情的価値も財産的価値に含めるため、判例の結論と大差ないものになると思われる。

→個人個人で財物の価値が違うことを考慮

  • 主観的消極的価値でも足りる:ラブレター、切手コレクション等

ステップ3 ここで、論点が出てきます。

〜論点〜 では禁制品も財物と言えるだろうか。

麻薬のような禁制品は「財物」にあたるか。思うに、禁制品も、その没収に一定の手続を要するものである以上、法定の手続によらなければ没収されないという限度においては法的保護に値する事実上の占有が可能である。よって、法定の手続によらない奪取行為に対する限度で、禁制品も財物にあたる。

〜論点〜 情報に財物性があるのか

情報自体は「財物」には当たらないと考えるのが体勢である。そのため、情報が化体した媒体(書類、ディスク等)に財物性を認めていくことになる。←ポイント!


ステップ4 では、結局のところ、奪取罪の保護法益はなんだろうか。

〜奪取罪の保護法益について〜

奪取罪の保護法益をいかに解するべきか。「他人が占有」(242条)の意義と関連して問題となる。まず、法律関係が複雑化した現代社会においては、現に財物が占有されているという財産的秩序の保護を図る必要がある。そこで、奪取罪の保護法益は、事実上の占有それ自体であり、「他人が占有」とは、権原によらない違法な占有を含むことを注意的に規定したにすぎない。

ということが導けると思います。

*保護法益を所有権その他の本権と解すると、被害者に所有権があることを民事裁判によって確定しなければ財産犯の成否を確定できなくなってしまうので、なかなか刑事裁判ができなくなる。


ステップ5 不法領得の意思が必要である(判例)

窃盗罪成立の主観的構成要件要素として、故意の他に不法領得の意思は必要か。必要であるとしてその内容はいかに解するべきか。

まず、可罰的な窃盗罪と不可罰的な使用窃盗とを区別する必要が有る為、単なる占有侵害の意思だけでなく所有者として振る舞う意思が必要であると解する。

また、窃盗罪はその利欲犯的性格の為に占有侵害という態様において異ならない毀棄罪よりも重く処罰されるのだから、それとの区別のために財物を利用処分する意思も必要であると解する。

よって、窃盗罪が成立する為には構成要件的故意の他に、不法領得の意思が必要であり、その内容は、権利者を排除し他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従ってこれを利用又は処分する意思であると解する。


ステップ6 窃取

窃取=占有者の意思に反して、自己又は第三者の占有に移す行為

自己の占有に移したかの程度が択一知識で問われる。→既遂か未遂かの分水嶺


 

最近記憶に新しいのは、水泳富田選手の窃盗罪疑惑ですね。韓国でカメラぬすんじゃったってやつですが、このとき、窃盗罪が成立するならば、盗まれた側のカメラ所有者の占有がまだあったということにもなりますね。

とりあえず以上にしますが、日々自分でも記述内容を見直したりするので、書き足しする可能性もありますので、ちょこちょこ覗いてみてください。 最後まで読んで頂いてありがとうございました。

今回参照した基本書・問題集

刑法各論 第6版 (法律学講座双書)

 

短答肢別本〈7〉刑事系刑法〈平成24年版〉

 

追記1:短答知識の補充

①運転終了後の電車内で客が忘れた物を車掌が領得→窃盗罪は成立せず、遺失物横領

運転終了後は一般人の立ち入りは困難であるので、占有が車掌に移ったと言える。

②いけすから逃げた鯉を人の物だと認識しながら領得→遺失物横領

鯉には帰趨本能がなく、占有を離脱している。なお、犬の事例で、窃盗罪の成立を認めた事例あり。

③鍵があいたままの車の中の財物についても、社会通念上の支配が認められるとした判例あり。

④死者の占有について、判例は、「被疑者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は、これを全体的に考察して他人の財物に対する所持を侵害したもの」として、殺害後の奪取行為に窃盗罪が成立するとしている。殺していない場合は、窃盗罪を構成しない。

⑤封をされた上で委託された包装物の内容物についての内容物についての占有の帰属について、判例は内容物を抜き取った行為について窃盗罪の成立を認める。(封がしてあるので、中身については占有が残っている)

⑥住宅等の侵入窃盗は財物を屋外に運び出す必要はなく、荷作りして出口の方に運んだ時点で、窃盗罪の既遂を認める。

追記2 死者の占有のまとめ

<死者の占有>

「事例①」当初から財物奪取の意思で、被害者を殺害し、その後に財物を奪った場合

「事例②」被害者を殺害後に財物奪取の意思を生じ、死者から財物を奪った場合

「事例③」殺害者以外の第三者(殺害現場の目撃者等)が、死者から財物を奪った場合

事例1は、強盗殺人罪が成立することに争いはない。

事例2の場合、判例は、

被害者を殺害した後に財物奪取の意思を生じて死者から財物を奪った行為につき、窃盗罪(235条)が成立しないか。この点、「他人の財物」とは、他人が占有する他人の財物をいうところ、死者には占有の意思も事実も無く占有を認めることができないので、窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪(254条)が成立するにすぎないとも思える。しかし、これでは法益保護機能を全う出来ない。そこで、被害者が生前に有した占有は、①被害者を死に致した犯人に対する関係では、②被害者の死亡と時間的・場所的に近接した範囲内に有る限り、なお刑法上の保護に値し、犯人が被害者を死に致した行為を利用してその財物を奪取したという一連の行為を全体的に評価して、その奪取行為は窃盗罪を構成するものと解する。

注意:この説はあくまで被害者が生前に有していた占有を保護しようとするものであり、死者の占有を認めるものではない。

 

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